「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」レポート①

パソコンのデータ整理をしていて、昔のレポートを発見!

供養として載せちゃいます。

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設題:Y  問題から何が生まれたのかを考察し、精神科リハビリテーションの原則や理念とあわせながら、自分の意見や考えを論述してください。

 

 Y問題とは、1969年10月11日に川崎市在住のY氏(当時19歳)が川崎市大師保健所の精神衛生相談員(今井功)の精神分裂病診断に基づき、医師の診断を経ずに精神病院(多摩川保養院)に40日間強制入院させられた事件に始まる。その後1971年12月1日にY氏が多摩川保養院を相手どり損害賠償請求した民事裁判が起こされ、1973年4月6日に第9回PSW全国大会でY氏が「同様の被害者を出さぬように」という主旨の告発・問題提起した一連の流れのことである(Y事件→Y裁判→Y問題)。

 精神科リハビリテーションとは、アンソニーが「長期にわたり精神障害を抱える人々の機能回復を助け、専門家による最小限の介入で、自らが選んだ環境でうまくいき、満足できるようにすること」であると定義している。この定義の特徴は①精神障害者の機能や能力の回復を助けること②最小限の介入③当事者が選んだ環境でリハビリテーションを実施すること④満足を得ることにある。

 果たしてY氏は、アンソニーが定義するような精神科リハビリテーションが必要なほどの重度精神病患者だったのだろうか。裁判の結果は、法律上の判断が難しく曖昧なものとなった(カルテ記載がなく証言のみ)。

 Y問題の経緯から精神保健福祉法第41条【(前文省略)その他の関係者等との連携を保たなければならない。】や第2項【精神保健福祉士は、その業務を行うに当たって精神障害者に主治の医師があるときは、その指導を受けなければならない。】が盛り込まれるようになったと推察される(※1)。(過去問で主治医の指導を問う出題あり。※2)

 当時の時代背景としては、1966年袴田事件(冤罪で死刑判決)、1967年布川事件(強盗殺人罪で服役→再審無罪まで44年)1968年永山則夫連続射殺事件・三億円事件があり、あの時代のゆるさ・科学的な根拠なしに自白を重要視する点などで充分あり得るなと納得した。

 しかしY問題から50年経過した現在も何も変わっていないし、問題も解決していない。現在も不登校・長期間無職・引きこもりの人間を本人に予告なしに家族からの依頼で自立支援施設に強制的に連れ出す「引き出し屋」が各地で横行している。とある県に自立支援施設から医療保護入院させる有名な病院がある。

 今日のリハビリテーションのあり方として、本人主体や人権が重要であるなどと耳障りのよいことを書く気はない。どの職業でも倫理違反や違法行為をする人間は一定数いる。警察官や弁護士は正義の味方ではないし、点数稼ぎに熱心な医者・わいせつ目的で保育士や教員になる人もいる。自分がそうならないように、またそういう人間に利用されないように注意を払うしかない。

 これはY氏が問題なのではなく、I(今井氏)に問題がある、I問題と言える。

 

 

※1【 】内引用【引用文献】

精神保健福祉法

https://hourei.net/law/409AC0000000131

 

※2

第19回(平成28年度)精神保健福祉士 過去問 

問62 精神保健福祉士法の規定に関する次の記述のうち、正しい物を1つ選びなさい。

① 身体上又は精神上の障害のある者の介護を行う。

② 信用失墜行為の禁止の義務がある。

③ 業務独占の国家資格である。

④ 医療保護入院者等の行動制限の要否の判断を行う。

⑤ 相談援助業務を行うに当たって主治医の指示を要する。

正答:② (⑤は、主治医の指導が必要であることに注意。 )

 

【参考文献】

・「最新 精神保健福祉士養成講座3 精神障害リハビリテーション論」

一般社団法人 日本ソーシャルワーク教育学校連盟 編集

中央法規 2021年2月刊 (P25)

 

(時代背景部分)

・「実録 戦後殺人事件帖 人を殺したい夜に読む本」

浅原裕久 アスペクト 1998年4月刊

 

「Y問題」の関連書籍を見つけられず、こちらの論文に詳細が載っていました。

 ↓

・研究論文「Y 問題」における被害事実と運動方針」

桐原尚之(2014年)

http://www.ritsumeihuman.com/uploads/publications/103/29_p049-063.pdf

 

・論文「Y問題」の歴史

桐原尚之(2013年)

https://www.r-gscefs.jp/pdf/ce09/kn01.pdf

 

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【追記】

レポート返却時の講師の講評で「レポートの最後に余計なことを書かずに【しかし、この事件が日本精神医学ソーシャルワーカー協会の倫理綱領となり、今日の日本精神保健福祉士協会倫理綱領に引き継がれている。】とすると課題達成でした。残念。」とコメントいただいたので、そうしたら最低点(合格点:60点)は取れるのでは?

ここに掲載しているレポたちは合格したのを掲載しているわけではないので(完成前の草稿段階のメモ書きなので)参考程度に留めておいた方がいいかと。

タイプミス・変換ミス・誤字しまくりだし。

 

Y氏のその後が気になります。日本の精神保健福祉の歴史に影響を与えた人物。

1950 年 6 月 15 日生れということは、存命ならば後期高齢者になっていますね。