『君は永遠にそいつらより若い』 津村記久子

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 ホリガイは地元の公務員試験に合格した、大学4回生(社会学科・22歳)のポチョムキン。←意味はこの本を読んでのお楽しみ(笑)。13ページまで読むと出てくるよ。
登場人物がみんなクセ者。飲み会で1回だけ一緒になった文学科のホミネくんはアパで首つり自殺をしてしまうし。彼のアパの1階下に住む子どもは両親からネグレクトされているし。聴講生のアスミちゃんはリストカッターだし。バイト先の後輩ヤスオカは巨根すぎて童貞らしいし。ボンバーヘットのイノギさんは中学2年生の時に暴行目的の輩に自転車ごと轢かれて、抵抗すると石で殴られ、右耳がへこみ、右のこめかみから大部分は髪の毛が生えていないし。彼女のその時の唯一の武器は自転車の鍵だった。それを10年ぶりに探すホリガイ。
 まぁ~人間なんて分かんないもんだよ。内面に問題を抱えていても、それを表出する人ばかりじゃないし。ホリガイは昔テレビでみた行方不明の男のコを捜すために児童福祉に関わろうと思ったらしい。アブラナの咲く土手で姿をくらました当時4歳の男児を。その望みどおり児童福祉にかかわるであろう就職試験に合格してしまう。そのコをさらった人物は歳を取ってゆくが「君は永遠にそいつらより若い」という暗い救いを信じるホリガイ。最後まで読んでやっとタイトルと表紙の写真の意味が分かったよ。でも表紙の男のコは、どう見ても4歳には見えないよ。小学5・6年生くらい?
 初めタイトルは「マンイーター」だったけど改題したみたい。改題して正解だったかも。
 首つり自殺・ネグレクト・リストカッター・20歳すぎて童貞なんて話は、もうこの世の中にはありふれていて新鮮味がないけど、それをカバーするだけの文章力が著者にはあった。語り口というか言い回しがお上手なの。次回作も読んでみたいなぁ~と思ったよ。
第21回太宰治賞受賞作。