原爆写真 『ノーモア ヒロシマ・ナガサキ』

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原爆写真『ノーモア ヒロシマナガサキ』 黒古一夫・清水博義 編  日本図書センター

日本図書センター創立30周年特別企画。戦後60年の2005年3月に出版された日本語・英語同表記の写真集。原爆直後の広島・長崎のすままじい現実が晒される。
 広島のきのこ雲のモノクロ写真で始まる衝撃的な写真集。焼け爛れた皮膚やケロイド、おびただしい数の白骨死体など息を呑む写真の数々。言葉も出ないよ。
 長崎のきのこ雲はカラーで迫力がある。きのこ雲って不思議な魅力があるな。こんなこと言うと不謹慎だけど。今までに見たことないからかもしれない。一回見たことある人は二度と見たくないだろうけど。(←この表現はマズイ?)

・縁側で被爆死した少年(P47)がすごい。長崎にて1945年8月10日。
爆風で家具や建具が吹き飛び、その中で縁側で少年が眠るように倒れて死んでいるの。外は多分ものすごく天気が良いのだろう。(モノクロでよく分からないが)長崎にて。この写真は被爆死っぽくないの。解説なくこの写真を見せられたら現代の写真と勘違いしそう。現代でいうと廃屋で殺害された風なの。

防空壕からカメラにほほえむ少女(P52)が特に印象的。長崎にて1945年8月10日朝。
この写真集の中で唯一といっていいほど希望のようなものが感じられる。地下の防空壕からひょっこり顔を出した18歳の少女。遠くに中町天主堂がかすんでいる。周辺は瓦礫の山。カメラマンが「は~い。ポース!」とか言ったのかは分からないけど、にっこりと笑った少女と瓦礫のギャップがなんとも言えない。1952年9月29日号の雑誌『ライフ』に「ラッキーガール」として掲載された写真。原爆を落とされた翌日にこんな風に笑えるものかな。

・雪をほおばる子どもたち(P84)1950年、広島原爆ドーム前にて撮影。
大人たちは「放射能があるから食べちゃいけんよ」というが、子どもはそんなのお構いなし!無邪気に雪を口に入れてる3人のちびっこ(5歳くらいかなぁ?)この写真は表紙にも使われているよ。やっぱりどんな時でも、子どもの写真は未来が感じられる。子どもが存在するだけで希望があるし明るい。先があるって思わされるもん。

 人物写真には、後日談が載っているのもあるの。「3日後に亡くなった」「被爆15年目に白血病を発症」「1984年に死亡」とか。そういうのもちゃんと取材しているんだなぁ。
ところどころに詩がはさんであるの。詩と著者略歴だけで解説はない。だから受け取る人が勝手に解釈していいわけ。その放っておかれ加減がいい。「これは原爆に対する怒りをこめた作品です」とか余計な知識がない分ストレートに心に突き刺さってくる。それはもうグサリと。
 そして淡々と表示される写真と説明文の数々が逆に痛々しい。もっと怒りや憎しみを表出させてもいいだろうに。あえてそうした作りはしないというのは時間の経過がなせるものなのだろうか。60年経った今だからこその、この作り。この写真集って優秀だな。プレゼントに渡したくなるもん。特に外国の学生に渡したい。国籍に関わらず大学生あたりに。ちょっと衝撃的内容だから高校生には早いかも?(人によるだろうけど、ここは一般論として)
 エノラゲイの内部がアメリカ・メリーランド州スミソニアン航空博物館に展示されているらしい。(今現在もそうなのかは分からないが)1回見てみたいなぁ。エノラゲイって機長のママの名前だって。
それって嫌だよね。殺人機に自分の名前を付けられてママはどう思ったんだろう。センスないな。
 この写真集は広島県立図書館で立ち読みしたんだ。本当に衝撃的な運命の出会いだったよ。原爆投下直後に「60年は草木が生えない」と言われた広島がここまで再生・発展するとは。尽力をつくした人々の苦労が偲ばれる街だな。路面電車に乗れてよかった。