『しずかな日々』 椰月美智子

イメージ 1

アパートで母と2人暮す、枝田光輝(えだ・みつき)10歳・小5。
内気でさえない枝田は友達もいないけど、その幽霊のような存在からいじめられもしない。
そんな枝田が5年生になり、後ろの席の押田に「三丁目の空き地で野球しようぜ」と声をかけられ仲良くなる。
それまでは学校が終ればアパで母の帰りを待ちつつ家事をする毎日しかなかった彼だが、少しずつその閉じられた世界が広がって行く。
しかし母が突然転職すると言い出し、それに伴い枝田は転校することに。
ここで初めて枝田は自分の「転校したくない!」という気持ちを表現し、抵抗する。
その結果、おじいちゃん(母の父)の家で祖父と2人暮すことになる。
小5の夏休みから祖父の家で生活し始める枝田。その静かな日々が淡々と綴られていく。
ラジオ体操・ホースでの水撒き・学校のプール・押田と自転車での遠出・グッピーの観察記録(自由研究)・スイカ・8月1日の11歳の誕生日・友達が家に泊まりに来る・花火・おじいちゃんの漬物・麦茶。
きらめく夏のしずかな日々。
最後の一文がこの本の全てを端的に表現しているよ。

『人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく。』(P268)

Dragon Ashの「静かな日々の階段を」をBGMにするといいかも。
表紙&裏表紙の写真は本城直季。公園の写真。どっかで見たことある作風だなぁ~と思っていたら、風景や建物をミニチュアのように撮影する写真家で2006年度に木村伊兵衛賞を獲った方でした。

第23回坪田譲治文学賞・第45回野間児童文芸賞のW受賞作品。