『贖罪』 湊かなえ

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日本一空気のきれいな場所と謳われる田舎町に、精密機械メーカー:足立製作所の新工場が立てられる。
それからコンビニもない町は、徐々に変化を遂げる。
工場の従業員として都会から来た見知らぬ人々が、町中にウロウロ。
5階以上の建物がない町に、7階建ての足立製作所の社宅マンションが建つ。
その社宅の最上階である7階に住む足立家。
足立家は、両親+ひとり娘のエミリで構成されている。


地元の小学校に転入した足立エミリ(小4)は夏休み中の8月14日の夕方、小学校の校庭で同級生と遊んでいる。
おとなしい紗英・しっかり者の真紀・メガネっ娘の由佳・大柄な晶子、そしてバービー人形みたいなエミリの5人。
そんな同級生5人がバレーボールのラリーをしていると、作業着姿の中年男性が現れる。
「おじさん、プールの更衣室の換気扇の点検に来たけど、脚立を忘れたんだ。誰か1人手伝ってくれないか」と言う。
子どもたちは親切心から「自分は器用」「みんなで手伝おう」とおじさんに言うのだが、おじさんはエミリだけを連れてプールの更衣室へと消える。
待っているうちに、夕方6時を告げる「グリーンスリーブス」が流れる。
子ども4人が更衣室に様子を見に行くと、男子更衣室にエミリが倒れて(死んで)いる。
これが事件の始まり。
でも読み進めていくうちに、この事件はある一部分にしか過ぎないことが分かってくる。
ネタバレするから、あんまり詳しくは書かないけど。


気になったのが「東京よりももっと遠い、関西に住んでいる人間が~」(単行本:P141)という一文。
殺人事件が起きた当時に、子どもたちが住んでいた場所(地名)というのが具体的には出てこないのね。
どこなんだろ?と気になりつつも読んでいたけど。
空気が日本一綺麗といえば、長野や北海道などが思い浮かぶ。
東京が遠くて、関西はもっと遠いというのなら、東日本だよね。


あと南条弘章が秋恵が自殺したと聞き、駆けつけようとして飲酒運転で接触事故→教師を懲戒免職になる(単行本:P236~237)という流れが疑問に思った。
まだエミリが生まれる前のことだから、25年以上前、昭和の終わり頃の話だよね。昭和60年代かな。
昭和末期の東京都教育委員会の飲酒運転に対する罰則って、そんなに厳しかった?
飲酒運転で接触事故。お互いのバンパーが軽くこすれただけで、双方に怪我はなし。それで懲戒免職。
まぁ~怪我ある/なしに関わらず、飲酒運転=一発アウト(解雇)という規定なんだろうけど。

飲酒運転が厳罰化(危険運転致死傷罪が刑法に追加)されたのは、2001年(平成13年)と21世紀になってからだよね。
2006年(平成18年)8月25日に福岡市で当時福岡市職員の男性が飲酒運転の末に幼児3人を死亡させた事故が有名だけど。
昭和末期は「飲んでどうやって帰ったか記憶がないけど、車庫に自分の車がいつも通りあるから運転して帰ってきたんだろうなー」とか言ってるおじさんが沢山いたけど。
それを聞いた同僚も「あらあら、気をつけてねぇ~」なんて返す程度だったと思うけど。
法律(刑事罰)とは別に、昭和末期の東京都教育委員会の職務規定はどうだったんだろう?
そんなに厳しかったのかしら?
ちなみに飲酒運転を黙認・軽視しているわけではありませんので、誤解なきように。
なんだか、この部分が気になったんだよね。