「精神保健福祉相談援助の基盤(専門)」レポート

パソコンのデータ整理をしていて、昔のレポートを発見!

供養として載せちゃいます。

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設題:相談援助におけるジレンマについて述べなさい。また、バーンアウトしないために、どのようなことをすればよいか具体例を交えて述べなさい。

 

 ジレンマとは、相反する複数の価値や倫理的根拠が存在し、そのどれもが重要である場合にどれを優先すればよいのかと葛藤することである。例えば相談者の自宅訪問時にお茶や茶菓子を出された場合。会社の職務規定では他者から物品をもらうことを禁じているが折角用意して頂いたものを四角四面にキッパリ断るのも心苦しい。さて、どうするか。この場合は利用者だけに責任を果たせばよいわけではなく、所属組織・専門職としての精神保健福祉士・関係機関・社会など全てに対して責任を負っている。
 代表的なジレンマとして以下のものが挙げられる。
・「プライバシーの尊重と秘密の保持」と「クライエントの自己決定の尊重」
・「プライバシーの尊重と秘密の保持」と「社会に対する倫理責任」
・「クライエントの自己決定の尊重」と「利用者の保護責任」
・「クライエントに対する倫理責任」と「「組織・職場に対する倫理責任」
・「同僚などへの敬意」と「社会的信用の保持」
 これらの相反する正解がない答えを導き出すためには、倫理綱領が示す倫理基準などを活用する。関連する倫理綱領以外の社会資源(法律や制度など)やスーパービジョン・コンサルテーションを活用するなどが挙げられる。また、これらの過程を記録に残すことも重要となる。
 2019年1月千葉県野田市で小学4年生(10歳)の栗原心愛(みあ)さんが虐待死する事件が起きた。心愛さんが「父親から暴力を受けている」と書いたアンケート用紙を野田市教育委員会が父親に見せた。これには様々なジレンマが複雑に絡み合っている。これにより結果として、心愛さんは死亡。正解はないが間違いは存在する。この場合何よりも優先すべきは児童福祉法第1条「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、育成されるよう努めなければならない」という【子どもの最善の利益】であろう。児童・生徒の育成に携わる者が知らないはずはないのだが。
 ジレンマにさらされ続けたり、努力に見合う結果が得られないことが続くとバーンアウトすることがある。バーンアウト燃え尽き症候群)とは身体的・精神的疲労の蓄積により、やる気・エネルギーが奪われることを指す。
 バーンアウトの症状としては、心的疲労感(疲れ果てる・やる気が出ない・無気力)・作業効率や作業能力の低下・突然の辞職やアルコール依存などである。最近では、コロナ病棟勤務の看護師がバーンアウト離職するケースが目立つ。
 バーンアウトの予防としては、バランスの取れた食事・適度な運動・十分な睡眠・スーパービジョン・職場環境の整備(個人ではなくチームで対応)・思考パターンを変えるセルフケア(認知機能強化)などで対処できる。
 マスラークが考案した「情緒的消耗感・脱人格化(人を人と思わなくなる)・個人的達成感の低下」から重傷度を判定するⅯBIを定期的に行うなどしてセルフチェックに努めることも重要である。

 

【参考文献】

・「最新 社会福祉士養成講座8 ソーシャルワーク実習指導 ソーシャルワーク実習」

一般財団法人 日本ソーシャルワーク教育学校連盟 編集

中央法規 2021年2月刊 (p269~277)