「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」レポート④

パソコンのデータ整理をしていて、昔のレポートを発見!

供養として載せちゃいます。

 

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設題:地域社会に即した精神科リハビリテーションとして、ACTが必要と言われています。カナダの例を見ながら、日本の地域の中でACTの充実を図るためには、どのような支援プログラムが必要なのかを、自分の意見や考えも入れ込みながら論述してください。

 

 ACTとは、1960年代後半にアメリカで始まったケアマネジメントモデルの1つである。重度精神障害者を対象とし地域社会のなかで自分らしい生活を実現・維持できるように包括的な訪問型支援を提供するものである。日本でのACTは「包括型地域生活支援」などと訳され、2003年(平成15年)5月に千葉県の国府台地区で実践活動が開始された。その後は各地域に広がりをみせ、東北では宮城県仙台市のS-ACTがある。

 ACTの特徴としては、チームアプローチ・利用者の生活の場(自宅)への訪問が活動の中心・365日24時間対応・スタッフ1名につき利用者は10名程度・個別化された直接サービスの提供・利用者の希望やストレングスを重要視・家族の状態に左右されることなく地域生活をサポートできる点などが挙げられる。

 一般的な訪問看護との違いは大きく3つあり、ACTは対象が重度精神障害に限定・チーム編成(精神科医・看護師・心理士・作業療法士精神保健福祉士・就労支援担当など)・多用なサービス(保健医療・生活支援・就職支援など)を組み立てていることである。

 日本の地域の中でACTの充実を図るためには、入院者の場合は退院後の住居支援・日常生活の支援プログラムが重要となるだろう。その先の課題として就労支援も必要となってくる。退院後にACTを利用して地域に住んだとして、回復してACT利用終了となる人はどのくらいいるのだろうか。ACTの終わりとは一体どこにあるのだろうか。例えば生活保護の場合、停止・廃止理由で1番多いのが本人死亡・行方不明(失踪)である。

 ○○県の精神障害者は入院(約2200人)と在宅合わせて27759人で、そのうち半数近くが△△市周辺の11439人である。(精神障害者手帳所持は1級1846人・2級3795人・3級1125人の合計6766人で、手帳普及率は約25%である。※1)△△市周辺でACTを実施するとして果たしてどのくらい利用者がいるのだろうか。訪問看護ステーションからでは精神保健福祉士の診療報酬はつかないので(精神科訪問看護指導料Ⅰ)、結局はホームヘルパー訪問介護)になってしまうのだろう。【注意:レポートでは実際に居住している県名・市名を記述していますが、掲載にあたり県名・市名は伏字とさせていただきます。】

 ACTは、単に医療保険制度で運営する精神科専門の訪問看護ではなく、生活支援の方法であり、その中のサービスの1つとして医療提供がある。医師の役割は医療的アセスメントと診断・薬物療法が中心となる。生活支援がメインなのに現状は診療報酬制度で運営しているから矛盾が生じている。介護保険制度のように制度を確立しないと普及は難しいだろう。(1063字)

 

 

【引用文献】※1

障害福祉の概要」平成30年度(平成29年度概要)

○○県健康福祉部障害福祉課 発行

※○○県における精神障害者は次のとおりとする。(法:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)

①法第20条(任意入院)、法第29条(措置入院)、法第33条(医療保護入院)、法第33条の7 (応急入院)により入院している者

②法第22条から26条の3の規定により、申請、通報、届出があり精神保健指定医の診察の結果、精神障害者と診断された者

③障害者総合支援法第58条の規定により、自立支援医療費の支給を受けている者

④法第45条の規定により、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者

 ⑤以上のほか関係機関などの情報に基づき、調査の結果精神障害者と認められた者

 

【参考文献】

・「最新 精神保健福祉士養成講座1 精神医学と精神医療」

一般社団法人 日本ソーシャルワーク教育学校連盟 編集

中央法規 2021年2月刊 (P234~235)

 

・「最新 精神保健福祉士養成講座3 精神障害リハビリテーション論」

一般社団法人 日本ソーシャルワーク教育学校連盟 編集

中央法規 2021年2月刊 (P15~16・181)

 

・「ACTガイド 包括型地域生活支援プログラム」

NPO法人 地域精神保健福祉機構(コンボ)発行 2010年3月刊

 

・精神保健医療福祉の改革研究ページ(カナダ)

https://www.ncnp.go.jp/nimh/keikakuold/old/archive/vision/overseas_ca.html

 

・「わが国におけるACTの課題と展望 ―臨床実践の振り返りをもとにー」西尾雅明

第103回 日本精神神経学会総会 教育公演

精神経誌 2008年110巻5号

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100050436.pdf

 

・一般社団法人 コミュニティメンタルヘルスアウトリーチ協会

https://www.outreach-net.or.jp/about