「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治 新潮新書 2019年刊
以前パラ読みした時に、あまり印象が良くなかった。
というのも「触法少年には発達障害や認知機能が低い子が多い。その子たちは本来ならば障害者(児)として福祉の援助対象なのに放置されている。犯罪を犯して少年院に行くが、何が悪いかを認知できないのに反省を促される。これでは意味がない。」と問題提起。
P30~31より引用
【どうすれば非行を防げるのか。非行化した少年たちに対しては、どのような教育が効果があるのか。そして今、同じようなリスクをもっている子どもたちにどのような教育ができるのか。そうした問題意識を共有し、加害少年への怒りを彼らへの同情に変えること、それによって少年非行による被害を減らすこと、犯罪者を納税者に変えて社会を豊かにすること。それが本書の目的です。】
非行少年に対して「今、大人がやれることは何なのか?」を問いかける。
結局→自分が開発した「コグトレ」というドリルを購入して認知機能向上してね☆
という宣伝だった。
ザ・宣伝!
何これ。
それから数年経過して、改めて最初から最後までしっかり読んでみたら、また色々と思うこと・考えることがあった。
以下、気になったこと。
P26~27より引用
【非行は突然降ってきません。生まれてから現在の非行まで、全て繋がっています。(中略)子どもが少年院に行くということはある意味、〃教育の敗北〃でもあるのです。】
どの職業でも「敗北」は使われるんだね。
相談支援では「虐待はソーシャルワークの敗北」と言われている。
教育分野では「(子どもの)少年院行きが、教育の敗北」なのか。
どのジャンルにも敗北はあるんだね。
では、運送業の「敗北」は何だろ?荷物が配達先に間に合わなかったら?
飲食業の「敗北」は何だろ?
看護での「敗北」は何だろ?
あなたの職業での「敗北」は何ですか?
以下【 】内p126~128を要約引用
【子どもへの支援は大きく分けて3つ。
・学習面
・身体面(運動面)
・社会面(対人関係など)
その3つの中での、社会面の支援とは
・対人スキルの方法
・感情コントロール
・対人マナー
・問題解決能力
これらのどれ一つでも出来ていなければ、社会ではうまく生活していけない。
そういった最も大切な社会面の支援が、学校教育で系統立ててほとんど何もなされていない。 】
とあるけど、社会面での支援は学校ではなく、主として家庭で教えるものでは?
遊園地で列に並んで順番を待つとか、知り合いに会ったら挨拶を促すなど。
1人でおつかいに行かせるのは、社会性が身につくと思うけど。
親が基礎を教えて、学校で応用(より多くの集団に適応)という感じでは?
子どもに学校が0から社会面を教えるというのは違うのでは。
【 】内、P69より引用
【少年たちの中にはIQは高いのにどうも要領が悪い少年や、逆にIQは低いのに要領がよくて賢いなと思わせられた少年が何人もいた(中略)現在の知能検査だけでは彼らの能力や生きる力を正しく評価できないのです。】
確かに IQ(知能指数)だけでは、人間の能力は測れない。
IQ数値は100が基準値で、90~109が平均値。(全体の50%)
IQ130以上でギフテッド。(全体の2%・メンサの会員になれる)
70以下で知的障害。では70~90のボーダー(境界)は何なの?(全体の22%いる)
健常者と障害者のはざまにいる人たち。
非行少年には、この70~90が多いという。
でも社会は90~109を基準に作られているから、低いだけでなく高くても適応できないよ。
130以上も生きづらいはず。
人はIQが20離れている他者とはスムーズな会話が成立しない。
東大卒芸人の藤本敦史(「Qさま!!」などに出演)はIQ130以上のメンサ会員だけどADHD(注意欠陥・多動性障害)の2E型。「ギフテッド」と「発達障害(ADHD)」を併発している状態。番組でメンサの会員証を持参しなくてはならない時に、家でなかなか見つからない。で、持参した会員証が折れてボロボロだった。
動物園で客が自販機でエサ(100円)を買って動物にあげられるコーナーがあるんだけど。
とある動物がおねだり上手(パフォーマンス)で、すぐにエサを買ってあげたくなる。それは IQでは測れない「生きる力」や「能力」「賢さ」なのでは。
動物園側は自販機の売れ残り個数から、本来のエサの量を調節するので、自販機購入で多くのエサをもらったとしても、食事量が増えるわけではない。というのまでは理解していないだろうけど。。。。
IQと「生きる力」「能力」「賢さ」は、また別だからね。
人間は、自分が見えてるものや感じ方を、他人も同じように見えたり感じたりしていると思いがちだけど。
例えば「太陽は何色?」と訊くと、日本人は「赤」と答える人が多い。
それは日本国の国旗がそうさせているのかな。
「オレンジ」や「黄色」と答える人は少数派。
自分が「赤」だと感じ、他者が「黄色」と感じる。
これに正解はない。
しかし特別公開で中に入ると、1階建てで中は天井まで吹き抜け。
外側だけ5階建て風に見せていたの。
認知の歪みは誰にでもある。
子どもの教育関係に携わっている方は、読んでみて損はないと思う。
発達障害と軽度知的障害の違いなど。